EXPLANATION OF SYMPTOM
症状についての説明
倦怠感
「なんとなくだるい」、「疲れやすい」などの症状は、特に病気ではなくても誰でも経験する症状です。一時的なもので数日のうちに気にならなくなる場合や、充分な睡眠や休養によって改善するものは、通常心配いらないと考えられます。一方、2週間以上続く倦怠感、これまで経験したことがないような性質・程度の倦怠感は、原因を明らかにする必要があります。夏バテやうつ状態などから、重い疾患まで様々の可能性があります。特に、息切れ・痛み・発熱・睡眠障害などを伴うときは、早めに受診してください。
食欲不振
食欲不振は主観的な症状で、実際には食事摂取量が減っていなくても、食欲がないと感じることもあります。不眠や不安が原因で、食欲が低下することもよくあり、必ずしも体の病気があるわけでもありません。
しかし、多くの身体疾患が食欲低下の原因となり、胃腸疾患だけでなく、肝臓・膵臓・心臓・肺・脳・血液などの異常も考えなくてはなりません。食欲不振のみでなく、吐き気、嘔吐、下痢、動悸、息切れ、手足のむくみ、頭痛などを伴い、食事摂取量が明らかに減少している場合には、早めの受診をお勧めします。
体重減少
体重は日々変動しており、ダイエットなど自分の努力で減らすこともできます。明らかに思い当たる要因がなく、体重の5%以上の減少がある時は、検査を受けることを考えましょう。
原因としては、ホルモンや代謝の異常(糖尿病・甲状腺機能亢進症など)、食道や胃腸の病気、慢性的な炎症(関節リウマチ・間質性肺炎など)、神経系の異常(脳血管障害・うつ状態など)、悪性腫瘍など、多くの病気があります。内科の受診を急ぐべき時とは、倦怠感・食欲不振・息切れ・動悸・胸痛・腹痛・頭痛・下痢・発熱など、他の症状を伴って体重が減少する時です。
体重増加
特に病気がなくても、食べすぎや運動不足でも、体重は増加します。一方、体重増加が病気の徴候である場合もあり、代表的な例としては、甲状腺機能低下症・副腎皮質ホルモンの異常・むくみや腹水などを生じる病気(心不全/肝硬変/腎臓病など)・ステロイドホルモンなどの薬剤投与などがあります。
また、たとえ大きな病気はなくても、体重増加が肥満のレベルにまで至ると、さまざまな病気(特に生活習慣病)の誘因や増悪因子となります。
肥満とは、BMI(Body Mass Index)が25以上と定義されています。BMIは、体重(kg)÷身長(m)の2乗で、これは肥満度を表す指標として、世界的に用いられている体格指数です。
例えば、身長160cmなら64kg以上となります。
体重増加が肥満の基準を超えた場合は、一度は健康診断か内科を受診して、生活習慣病やメタボリックシンドロームの評価を行うようにしてください。
動悸
動悸とは、「ドキドキした胸の鼓動を感じる」、「脈が乱れているのを感じる」、「時々胸がキュッと締め付けられる感じがする」などと表現される症状を指します。
医学的に異常がないことから、貧血や心臓病の場合まで、様々の状態があり、1回の診察ですぐに診断がつかないこともあります。ホルター心電図(24時間心電図)や心臓エコー検査が必要となることもあり、アップルやグーグルなど腕時計の記録が、診断の役に立つこともあります。動悸とともに、息切れがある、意識がぼんやりしたり、実際に失神して倒れたり、自分で脈を測ってみて1分間に120以上になっている時などは、精密検査を急ぐべきです。
息切れ・呼吸困難
息切れ・呼吸困難とは、呼吸が苦しく、呼吸をするのに努力を要する状態です。心臓や肺の病気・貧血・甲状腺などホルモンの異常などが原因で起こることが多く、走ったり階段を登ったりすると健康な人でも経験する症状です。「安静にしていても息が苦しい」、「今まで楽にできていた運動で息が切れる」、「夜間寝ているときに呼吸が苦しく起き上がってしまう」などの症状は、重大な病気の症状であることもあるので、まずは内科を受診しましょう。新型コロナウイルス感染などの肺炎で、発熱や咳とともに、呼吸が苦しくなり、顔色も悪いときは、緊急的に救急コールセンター(#7119)などで相談をしてください。
せき、痰
咳や痰は、喉・気管支・肺の病気による症状ですが、気管支や肺に入った病原体や異物を吐き出す役割もあります。一時的な咳や痰は、症状が軽く日常生活に影響がなければ、必ずしも治療の必要はありません。
しかし、喘鳴がある時、黄色い痰・血痰・発熱・倦怠感・息切れ・呼吸困難・むくみなどを伴う時、2週間以上続く時などは、早めに内科を受診して原因を明らかにする必要があります。
発熱
健康者の平熱は、通常36℃台前後で、発熱とは一般的に37.5℃以上の体温のことを言います。体温は、同一人でも時間によって常に変化しており、人によっても異なります。
病的な体温上昇は、感染症・膠原病など炎症性疾患・アレルギー性疾患・腫瘍・薬剤の副作用など、幅広い全身の病気や状態で見られる症状です。医療機関を受診するべきタイミングも、疾患により異なります。 頻度の多い感冒やインフルエンザなどの場合は、通常成人では無治療や市販の感冒薬などでも、症状は一時的で自然に軽快します。発熱・咽頭痛・咳などの症状があっても、最近ではインフルエンザや新型コロナウイルスの検査キットが市販されており、これらの検査を自分で行ってから、医療機関へ電話で相談することが多くなっており、感染拡大防止の観点からは正しい対応と言えます。ただし、注意すべきなのは、65歳以上の高齢者、妊娠中・糖尿病・がんの治療中など基礎疾患のある方は、重症化することがあるので、発熱などの症状が出てから3日以内に治療を受けることが望ましいとされています。急性感染症以外の発熱では、一律の対応はなく、他の症状と併せ考え、食事ができない、具合が悪くて日常生活に支障があることなどを基準として、医療機関への受診をためらわないことが大切です。
貧血
貧血は、血液中の赤血球・血色素(ヘモグロビン)・ヘマトクリットなどが減少した状態で、軽度であれば症状はなく、高度になるにつれ倦怠感・息切れ・めまいなどの症状が出てきます。
貧血の原因は、骨髄での血液生成の障害・出血など血液の喪失・食事からの鉄分/ビタミンなどの摂取不足や吸収障害・体内で血液が過剰に壊される溶血などがあります。特に、出血など血液を喪失するタイプの貧血の精密検査で、胃腸や婦人科領域のがんが見つかることもあり、原因をしらべる検査を受けることが大切です。
女性では生理の出血があるため、軽い貧血の人が多くみられます。しかし、男性では原則として、貧血は何らかの異常があると考えるべきで、女性でも今までの貧血が悪化した時には、しっかり精密検査をする必要があります。
めまい
めまいは、「体がフラフラする」、「立ち眩み」、「ぐるぐる目が回る」など、多彩な症状を指しています。内耳などの耳鼻科的な異常(メニエール病など)、脳神経などの異常(脳血管障害や脳腫瘍など)、血圧の低下や貧血など全身の原因で生じてきます。耳鼻科的なめまいは、ぐるぐる目が回る・耳鳴りや嘔吐を伴うなど、派手な症状であることも多いですが、めまいそのものによる生命の危険はありません。一方、脳神経の異常や貧血などの内科的な疾患でのめまいは、フラフラするが座ると改善するなど、深刻な症状でないように思えても、脳梗塞・心疾患・がんなどが隠れていることがあり、注意を要します。
めまいの検査は最初から内科でもよく、耳鼻科で異常なしと言われたが、めまいが改善しない場合は、是非とも内科への受診をお勧めします。
頭痛
頭痛は、脳の病気が原因と思いがちですが、眼・耳・鼻・首・全身の病気の症状として現れることもよくあります。眼鏡があっていない・中耳炎・副鼻腔炎・首~肩の筋緊張性頭痛・全身の感染症や炎症性疾患に伴う頭痛なども、珍しくありません。いずれかの原因が思い当たる時は、その治療を担当する医師に相談していただき、原因がはっきりしないときは内科への受診となります。特に、急激に発症する激しい頭痛の時は、脳出血などの緊急性が高い病気もあり得るので、早めに受診してください。子供のころから、片頭痛があり治療薬を内服している方でも、頭痛の性質や強度が変わった時には、新たに脳血管障害が発症していることもあるので、再度精密検査を受けることが大切です。
関節痛
内科の病気で生じる関節痛は、手足の複数から多数の関節に痛みがあることが一般的です。激しい運動後など明らかな誘因がある場合を除いて、手足の多数の関節痛、特に手足の指に関節痛が2週間以上続くときは、リウマチや膠原病などの検査を受ける必要があります。リウマチや膠原病は女性に多い病気で、通常慢性的に関節痛や関節のこわばりが続きます。時には、発熱・皮膚炎・肺炎・腎障害などを伴って急速に病状が進行することがあり、38℃以上の発熱を伴うときには受診を急ぐ必要があります。
むくみ
むくみは医学的には浮腫と呼ばれ、皮膚の下の皮下組織に水分が過剰にたまった状態です。
全身的には、心臓・腎臓・肝臓・ホルモン・栄養などの障害によって生じます。一般的には手足顔などに出現し、足に強く出ることが多い傾向にあります。局所的な要因としては、下肢の深部静脈血栓症・蜂窩織炎・蕁麻疹・リンパ管の障害(子宮癌や乳癌の治療後)などがあり、この場合は原因のある部位のみの浮腫であることが、全身性の場合とは異なります。今まで浮腫のなかった人に出現した場合は、一度は原因を調べることをお勧めします。また、深部静脈血栓症(急に一方の足がむくむ)や蜂窩織炎(細菌感染により赤く腫れて痛みや熱をもつ)の場合は、急いで治療しないと、肺塞栓症や敗血症などを引き起こして、生命に関わる場合もあります。
手足のしびれ
手足のしびれは、脳・脊髄・末梢神経のいずれの異常でも起こる症状です。
脳の障害としては、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害が多く、左の上下肢または右の上下肢のしびれ感を訴えることが多く、頭痛・ろれつが回らない・顔面神経の異常などを伴うことがあり、急にこのような症状が出たときは、急ぎ救急病院を受診する必要があります。脊髄の障害としては、椎間板ヘルニア・脊椎圧迫骨折・脊柱管狭窄症などによる脊髄神経根への圧迫が、原因であることが多く認められます。症状は片側の手足に出現することが多く、体動や姿勢によって症状が大きく変化し、疼痛やしびれのため歩行できなくなることもあり、整形外科での治療となります。末梢神経の障害としては、糖尿病やビタミン欠乏などによる末梢神経障害や、末梢神経炎などによるものがあり、一般的には両手や両足に症状が出現します。内科で血液検査などを行って診断し、治療を行います。いずれのタイプかはっきりしないしびれ感の場合は、まず内科で検査を行い、原因によっては専門医への紹介をします。
筋力低下
筋力低下は、脳・脊髄・末梢神経・筋肉のいずれの異常でも起こる症状です。
脳の障害である脳梗塞や脳出血、末梢神経の障害である末梢神経炎や神経変性疾患、筋肉の障害である筋炎や筋委縮症などが、主な原因となります。
脳の障害では、筋力低下は左右いずれかの半身に認められることが多く、頭痛・ろれつの障害・顔面神経の異常などを伴うことがあり、急にこのような症状が出たときは、急ぎ救急病院を受診する必要があります。
末梢神経炎や筋炎では、急に両側の四肢に症状があらわれ、急速に進行して歩行できなくなることもあり、他に症状がなくても数時間から1日で症状が明らかに進む時は、急いで受診されることをお勧めします。
腹痛
腹痛は、腹部内臓のいずれの障害でも生じる症状です。痛みの部位によって、ある程度原因の臓器を絞り込むことができます。
みぞおち→胃・十二指腸・食道・胆のう・膵臓
右上腹部→胆のう・十二指腸・胃・膵臓・腎臓
左上腹部→胃・食道・膵臓・脾蔵・腎臓
臍周囲→胃・十二指腸・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓
下腹部→小腸・大腸・虫垂・腎臓・尿管・膀胱・前立腺・子宮・卵巣/付属器
このほか、腹部の血管・腸間膜・後腹膜・腹壁などの病気でも腹痛を生じることがあります。
各臓器の病態としては、炎症・潰瘍・癌・結石・血流障害などがあり、炎症・結石・血流障害は急に症状が出現することが多く、潰瘍・癌などは慢性的な痛みであることが一般的です。
医療機関を受診する目安としては、急激で激しい痛みの時は救急病院、急性の腹痛で下痢や嘔吐などを伴うときは早めに消化器内科、慢性の痛みであるが徐々に悪化している場合や、症状が良くなったり悪くなったりして繰り返している場合も、消化器内科へ受診するようにしましょう。
胸やけ
胸やけは、胃液が食道に逆流する逆流性食道炎や、食道や胃に潰瘍や腫瘍がある時に、よく出現する症状です。甘いものや脂肪の多い食品で悪化し、牛乳や水を飲むことで改善することがあります。逆流性食道炎は、逆流する胃液により食道の粘膜が障害されて、症状が生じます。診断には胃内視鏡検査が行われますが、食道粘膜にほとんど障害がない方でも、胸やけが繰り返し出現することがあり(胃食道逆流症)、治療しても症状が完全に消えないこともあります。こうした診断や治療が難しい場合でも、消化器内科の専門医療により症状による苦痛を改善することもできますので、これまでの治療がうまくいかなかった方も、遠慮なくご相談ください。
胃もたれ
胃もたれは、「食後長時間食べ物が胃内に残っている感じ」、「胃に違和感がある」、「みぞおちの重苦しい感じ」というような症状です。胃十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、糖尿病などの胃運動障害などにより、食物残渣が胃内に残っていることもありますが、検査により客観的な異常を認めないこともよくあります。また、胃の病気ではなく、胆のうや膵臓からの症状であることもあります。食道・胃・十二指腸・肝臓・胆のう・膵臓などの検査をしっかり行い、症状の詳細をお聴きしたうえで、個々の病態や症状にあった治療法を検討します。
吐き気・嘔吐
吐き気や嘔吐は、食道から胃腸の通過障害、肝障害、腎障害、脳神経の異常、血液中の塩分の異常など、幅広い領域の病気によって引き起こされます。一時的な吐き気や嘔吐は、感染性胃腸炎や片頭痛などでも認められ、自然に軽快することもありますが、急にこれまでにない頭痛と嘔吐が出現した時は、脳出血などの緊急性の高い疾患の可能性もあります。また、腹痛や腹部の膨満感を伴った嘔吐は、腸閉塞・胆のう炎・膵炎など、急性炎症性疾患であることもあるので、できるだけ早く消化器内科や外科を受診しましょう。繰り返す慢性的な吐き気や嘔吐は、肝障害・腎障害・血液中の塩分の異常・悪性腫瘍などの可能性もあります。早めに消化器内科で検査をして、正確な診断をしたうえで、適切な治療を受けていただきたいと思います。
食事がつかえる
食事がつかえるという症状は、喉から食道・胃・十二指腸にいたる食事の通り道に問題がある可能性があります。つかえる部位がどの辺に感じるかが重要な情報で、詳しくお話しいただくことが安全な検査につながります。咽喉頭の腫瘍、食道炎、食道癌、胃潰瘍、胃癌、十二指腸潰瘍などが主な原因です。このような異常が全くなくても、喉につかえ感を感じる場合もありますが、悪性腫瘍などが原因のこともあるので、まずは検査をお勧めします。診断のためには、胃内視鏡検査を行います。喉につかえ感がある時は、通常の内視鏡では検査がつらくてできないこともあり、鼻から喉の状態を詳しく観察しながら検査ができる経鼻内視鏡検査をお勧めしています。どうしても内視鏡は苦手という方には、慎重に胃部X線検査(上部消化管造影、胃透視)を行うこともできます。検査の方法や心配な点は遠慮なくご相談ください。
下痢
下痢や便秘は、健康な方でも日常的に経験する症状で、あまり心配な症状ではありません。一時的に下痢や便秘となっても、自然にあるいは市販薬のみで治ってしまうこともあります。また、慢性的な下痢であっても、過敏性腸症候群という状態では、腸の蠕動運動に障害があり、検査をしても器質的な(目に見える)病気はないということもあります。食当たりなどの感染性腸炎でさえも、ほとんどの方が数日で下痢も腹痛もおさまってしまいます。強い腹痛・多量の下痢が1日5回以上・血便・38℃以上の発熱・食事や水分摂取ができない場合は、検査や治療が必要です。慢性的な下痢で器質的な異常がないことが分かっている方でも、下痢の状態が大きく変わった時には、再度検査を受けることをお勧めします。自己判断で自宅に残っている抗生物質(抗菌薬)を服用したりすると、原因である便中の細菌の同定を妨げることになります。さらに、下痢の原因によっては、抗菌薬がかえって病状を重症化させることがあることも報告されています。
便秘
便秘とは、医学的には「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されており、自分のいつものペースで、苦痛なく排便できていればよいということになります。 排便にこだわりがありすぎると、毎日排便がないとか、便が固いということを気にして、下剤を飲みすぎてしまうこともあります。医療機関を受診する目安は、これまでの排便ペースが遅れて2週間以上もとに戻らない時、排便に難渋するようになった時、便回数は変わらないがスッキリ排便できず残便感がある時、便の太さが細くなってきた時などです。
血便・下血
血便・下血とは、一般的に「便に赤い血が混じる」、「便自体が赤いまたは赤黒い」、「血液だけが排泄される」ことを指しています。この症状は、大腸や下部小腸など肛門に近い部位から出血をしていることを意味しています。胃や十二指腸など、胃腸の上部からの出血では、少量であれば便に異常はなく、大量の時はタール便といってコールタールのような真黒い便になります。貧血の治療で鉄剤を内服している方は、薬の作用で黒い便が出ますので、これはタール便とは違います。血便・下血は、たとえ元々痔からの出血がある方であっても、一度は精密検査が必要です。
便が白ぽい
便の色は、通常黄色から茶色で、食事内容や便通の状態によっても変ってきます。いつもと違った白い便が出るときは、肝臓・胆のう・胆管・膵臓などの異常を考えます。
便の色は、肝臓で作られる胆汁という消化液に含まれるビリルビンという色素によって茶系色になっています。肝臓の病気によって胆汁の排泄が悪くなった時や、胆のう・胆管・膵臓の病気によって胆汁が肝臓から腸に流れにくくなった時に、白い便となります。こうした時には、黄疸といって眼の結膜や皮膚が黄色く染まっていることも多いので、注意して観察しましょう。黄疸が場合や、38℃以上の発熱もある場合には、化膿性胆管炎という緊急処置が必要な病気である可能性もあるので、急いで消化器内科を受診しましょう。
血液を吐く(吐血)
血液を吐いたときには、歯ぐきなど口からの少量の出血である場合以外は、原則すぐに病院を受診する必要があります。吐いたものの色に注意して、真っ赤な血液を大量に吐いたときは、食道・胃・十二指腸などからの大出血の徴候で、ショック状態になったり、意識を失ったりすることもあるので、急いで救急病院を受診して下さい。咳や痰とともに血液を喀出するのは、喀血といって吐血とは区別します。この場合は、気管支や肺からの出血ですが、吐血か喀血か区別がつかない場合は、まず消化器内科を受診しましょう。
食欲不振
食欲不振は主観的な症状で、実際には食事摂取量が減っていなくても、食欲がないと感じることもあります。不眠や不安が原因で、食欲が低下することもよくあり、必ずしも体の病気があるわけでもありません。 しかし、多くの身体疾患が食欲低下の原因となり、胃腸疾患だけでなく、肝臓・膵臓・心臓・肺・脳・血液などの異常も考えなくてはなりません。食欲不振のみでなく、吐き気、嘔吐、下痢、動悸、息切れ、手足のむくみ、頭痛などを伴い、食事摂取量が減少している場合には、早めの受診をお勧めします。
お腹の張り感(腹部膨満)
お腹が張る原因は、胃腸にガスがたまっている場合、肝臓など腹部の内臓が大きく腫れている場合、腹水という水が溜まっている場合などがあります。明らかに大きくお腹が張っている場合は、どの原因であったとしても、消化器内科での検査が必要です。腸閉塞、幽門狭窄、腹部臓器の腫瘍、大量の腹水などが考えられるからです。いつもより少し張っている程度の時は判断が難しく、他の症状を併せ考えて受診を決めるのが一般的です。
便秘が悪化してお腹が張ってきた場合や、腹痛とともに張り感が徐々に強くなってきた場合は、早めに受診しましょう。
黄疸
皮膚や眼の結膜が黄色くなるのが黄疸です。その原因は血液中のビリルビンが増加することです。ビリルビンの増加は、肝臓の障害、胆のう・胆管・膵臓などの病気、赤血球が血管内で壊れる溶血などが原因となります。肝臓・胆のう・胆管・膵臓の病気では、肝臓からのビリルビンの排泄が障害され、肝細胞や肝内胆管にビリルビンがうっ滞し、血中のビリルビンを排泄することができなくなり、黄疸が出現します。溶血では、赤血球から血色素(ヘモグロビン)が血液中に放出されます。ヘモグロビンはビリルビンに代わり、通常は肝臓に取り込まれ処理されて、胆汁の中に排泄されます。溶血では血液中のビリルビン濃度が肝臓の処理能力を超えると、外見的に黄疸となります。一方、肝臓にも周辺臓器にも病気はなく、生まれつき体質的にビリルビンが軽度上昇している方もいます。こうした異常を体質性黄疸と呼び、ほとんどの場合有害なものではなく、治療の必要もありません。普段は、総ビリルビンが正常かわずかに上昇しているだけですが、感冒や炎症を起こす病気に罹患した時にさらに上昇して発見されることもよくあります。しかし、2次検診などで行われる血液検査(直接ビリルビン・間接ビリルビン)により、比較的簡単に診断できます。
貧血
血液検査のうち赤血球数/血色素/ヘマトクリットが減少した状態が貧血で、それぞれの数値から、貧血の原因をある程度推定することもできます。
貧血の原因には、出血による血液の喪失/骨髄での造血障害/赤血球の寿命短縮などがあります。出血による血液の喪失は、胃潰瘍/十二指腸潰瘍/食道・胃・小腸・大腸のポリープや腫瘍/炎症性腸疾患/痔核など、多くの消化器系疾患で認められる症状です。消化器内科では、口~胃腸~肛門までの検査を行い、病気の診断と治療を行います。口~喉の病気に関しては、歯科や耳鼻咽喉科での検査も行い診断することもあります。
肝障害
血液検査で、総ビリルビン/AST/ALT/γGTP/ALP/LDHなどが上昇していると、肝障害が疑われます。AST/ALT/LDHは肝細胞の障害、γGTP/ALPは胆管の障害を、主として反映します。総ビリルビンはいずれの異常でも上昇しますが、比較的強い障害がある時に、他の数値より遅れて上昇してきます。また、総ビリルビンは病気でなくても、体質的に少し高い方もいます。
肝障害は、軽い脂肪肝でも肝臓や胆のうなどの癌でも見られる異常で、数値が少し高いだけだから軽い病気であるとは限りません。その原因を、さらに詳しい血液検査/腹部エコー(超音波)検査/CT検査などによって明らかにすることが必要です。初めて肝臓が悪いと言われた時や、これまで脂肪肝でいつも肝障害があると言われていても、急に数値が倍以上になった時などには、消化器内科での精密検査を受けるようにしましょう。
膵疾患の疑い
健診や人間ドックの血液検査で、膵疾患の疑いがあると言われるのは、アミラーゼという数値が上昇している場合です。アミラーゼは膵臓だけでなく、口の唾液腺の異常でも上昇しますし、病気の無い方でも体質的に数値が高い方もいます。アミラーゼの上昇の原因が膵臓か唾液腺かについては、血液検査で簡単にわかります。原因が膵臓であることが判明した時には、たとえ腹痛や下痢などの症状がなくても、超音波検査/CT検査/MRI検査などを行うことをお勧めします。膵臓の病気は初期には症状もなく、症状が進行してから発見されることも多く、積極的に検査をすることが大切です。
栄養障害
検診や人間ドックで栄養障害を指摘される時は、血液検査でアルブミン/コレステロール/中性脂肪/コリンエラスターゼなどが低値となっています。食事全体やタンパク質の摂取量が少ない、腸管からの栄養素の吸収障害、甲状腺の機能亢進症、肝臓病や癌が進行して栄養状態が悪化している場合などが考えられます。食欲不振/下痢/腹痛/黄疸/腹水など、他の症状も勘案しつつ、胃腸の検査、肝臓/胆のう/膵臓/ホルモンの検査などを行います。
炎症反応高値
炎症反応は、全身どこの炎症でも上昇し、消化器系の疾患とは限りません。しかし、腹痛や下痢などが続いている時、診察で腹部に異常がある時、肝障害や膵疾患の疑いがある時などは、消化器内科での精密検査をお勧めします。
血圧上昇
高血圧とは、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019によると、病院や診療所で測定した血圧で140/80mmHg以上、自宅で測定した家庭血圧では135/85mmHg以上とされています。
この程度の血圧であれば医療機関を受診されない方もおられますが、2次検診を指示された場合など、この段階で医師や栄養士などに、食事や運動など生活習慣の是正について相談することが大切です。高血圧、糖尿病、脂質異常症のうち複数に罹患している人は、内臓脂肪型肥満の人のなかでも心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気をおこしやすいため、メタボリックシンドロームとして早期からの治療開始が必要であるとされています。血圧が高いと言われた時は、高血圧やメタボリックシンドロームの可能性を検討して、治療のチャンスを逃さないようにして下さい。
血糖上昇
血糖値とは、血液中のブドウ糖濃度のことで、10時間以上絶食により空腹状態で測定した値を空腹時血糖と呼び、約70~110mg/dlが正常とされています。
血糖値を調節するホルモンをインスリンと呼び、膵臓から分泌されます。インスリンの作用不足により血糖が慢性的に上昇する状態が糖尿病です。血糖値は食事の影響で大きく変動するので、血糖値が高いだけでは糖尿病と診断することはできません。
糖尿病の診断は、グリコヘモグロビン(Hba1c)という血液検査や、インスリンの分泌や作用の状態、膵臓・肝臓・副腎・腎臓などの働きを見る検査、眼底所見、末梢神経障害の有無などを検査し、総合的におこなわれます。糖尿病、高血圧、脂質異常症のうち複数に罹患している人は、内臓脂肪型肥満の人のなかでも心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気をおこしやすいため、メタボリックシンドロームとして早期からの治療開始が必要であるとされています。 血糖値が高いと2次検診を勧められた時には、たとえ糖尿病でないとしても、メタボリックシンドロームの可能性を考えて、適切な食事運動療法や薬物治療の必要性を検討してもらうことが大切です。
コレステロール高値
健診や人間ドックの血液検査で行われるコレステロールに関する検査では、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールなどが測定されます。LDLとはLow Density Lipoprotein、HDLはHigh Density Lipoproteinの頭文字で、その物質の重さで分類されていますが、生体内での働きとしては、LDLは動脈硬化を悪化させる悪玉コレステロール、HDLは動脈硬化を抑制する善玉コレステロールとして作用しています。
血液中のコレステロールにはLDLやHDLのほかの種類もあり、総コレステロールとはそれらすべての総和です。また、HDL以外のコレステロールは動脈硬化の増悪因子となるので、健診などではHDL以外のコレステロールの合計を、nonHDLコレステロールという名称で表示されることもあります。動脈硬化が進行すると、全身の動脈が細く硬くなり、血管が詰まることにより、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気の原因となります。したがって、LDLコレステロールやnonHDLコレステロール値が高い時、HDLコレステロール値が低い時には、その原因を検査して、食事や運動療法など原因に応じた治療によって、数値を正常にすることが大切です。
中性脂肪高値
中性脂肪は血液中の脂肪の一つで、健診などでは「トリグリセリド」と表示されていることもあります。筋肉の運動などのエネルギー源となる重要な脂肪ですが、高値が続くと脂肪肝、動脈硬化、内臓脂肪などが増悪する原因になります。直前の食事の影響を大きく受け、値が変動するので、原則として空腹時(前日の21時以降は水やお茶の摂取のみ)で採血する必要があります。
炎症反応上昇(白血球数・CRP・血沈)
血液検査の中で、白血球数・CRP・血沈は炎症反応と呼ばれ、炎症の程度を示す検査です。全身の炎症を反映するので、歯肉炎、副鼻腔炎、扁桃炎、肺炎、虫垂炎、胆のう炎、膵炎、腎盂腎炎、蜂窩織炎など、臓器に関わりなく炎症があれば数値が上昇します。その数値は炎症の程度を反映しており、数値が高いほど炎症が激しいとも言えます。これらの数値は、細菌感染が原因の炎症により上昇し、ウイルス感染では数値の上昇は軽度で、白血球数は減少することもあります。また、白血球数は発病初期から上昇し、CRPは遅れて上昇してきます。血沈は炎症反応のなかでは、慢性的な炎症を反映する傾向があり、結核やリウマチなどの慢性的な炎症を主体とする病気では、白血球数やCRPがほとんど正常になった後も、慢性炎症の消長によっても変動するので、病勢把握のために検査されることがあります。一般的に、炎症反応が高い時は、炎症のある部位に痛みや腫れなどがありますが、全く症状がないのに検査値が上昇していることもあります。白血球数は、体質的に上昇している人もあり、炎症のない血液疾患などでも上昇することがあります。CRPや血沈は、症状がまだ出ない軽い炎症を反映していることもあります。症状がない時こそ、炎症反応が上昇している原因をしっかり検査することが必要であることがありますので、内科で相談していただきたいと思います。
尿蛋白(タンパク)陽性
尿中の蛋白とは、蛋白のなかでもアルブミンを測定していますが、通常は陰性です。健康でも、食事の内容や運動などにより、尿中にわずかな蛋白が検出されることがありますが、尿蛋白+~+++の時は、腎臓に異常がないか検査する必要があります。血液検査で腎臓の働きを見る検査として、クレアチニンや尿素窒素という検査がありますが、これらの数値が正常でも、尿蛋白が+以上の陽性であるときには、精密検査が必要です。慢性の腎臓病は初期には症状がなく、むくみ・吐き気・食欲不振・息切れなどの症状が出たときには、病状が進行していることが多いからです。特に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心臓病など、慢性腎臓病の危険性が高い方が、尿蛋白陽性となった時には、是非とも精密検査を受けてください。
尿潜血(ヘモグロビン)陽性
尿潜血とは、尿中のヘモグロビン(血色素)のことで、これが陽性であるということは、腎臓から膀胱までのどこかで少量の出血が起こっていることを意味しています。多量の出血の時は、目で見た尿の色が赤~暗赤色(コーラのような色)になります。また溶血といって、血管内で赤血球が壊れる病気の時にも、赤血球中のヘモグロビンが血液中に遊離し、尿中に出てくることで尿潜血が陽性になります。腎臓~膀胱までに出血を起こす疾患としては、結石・炎症・腫瘍などがあげられ、腎結石・尿管結石・腎炎・膀胱炎・腎癌・膀胱癌などの可能性があるということになります。最初の検査は、内科でも泌尿器科でもよく、血液検査・尿培養・尿細胞診・超音波検査などで、原因を精査します。